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ワンマンでの撮影スタイル(後編)
~ラン&ガンスタイルの現場で意識するべき3つのポイント~

こんにちは、由井友彬(Instagram@tomoaki_yui)です。

前回の記事では「ワンマンでの撮影スタイルについて」について解説しましたが、今回はワンマン撮影で、かつラン&ガンスタイルの現場の時に、作品の質を確実にあげるために意識するべき3つのポイントについて書いていきたいと思っています。

結論から言うと、以下3つのことです。

  • 演者がいる場合、3つの焦点距離で撮影しておく
  • ショットリスト(もしくは簡単なイメージコンテ)を作っておく
  • B-rollを多めに撮っておく

これらは映像制作をすでに仕事として行っている方や、常に撮るものが決まっている撮影をしている方には少し当たり前になるとは思いますが、僕自身最近この3つのポイントの重要性を再認識したので、ここに記録として残しておこうと思います。

1. 演者がいる場合、3つの焦点距離で撮影しておく

これは、僕が映像制作を始めた最初の頃に陥った現象で意識するに至ったのですが、撮影が終わり「さあ編集だ!」と素材を見てみると、なんと同じような画角の素材ばかりになってしまっていたんです。
残念なことに似た画角が続くせいで、作品全体が単調になってしまいました。

こうした素材のバリエーションの欠如を防ぐためにも、コンテなどで具体的に撮る画角が決まっていない時は、次の3つの画角を意識して撮影に臨むと、後々の編集でだいぶ楽です。
ちなみにこれらは製品カットなどを撮る際にも全て活用できます

3つの画角-(1)エスタブリッシュ・ショット

エスタブリッシュショット
演者のいる状況や場所などの設定を見せるための広い画角のカットです。
映画などで最初のシーンに広大な空撮などから物語がスタートしたりするのは、このエスタブリッシュ・ショットです。
ここで言いたいのは、要は「演者の全身が入って、なおかつ周辺の状況がわかるカットを撮っておこうよ」ということです。
毎回Droneなどで超超広い画を撮る必要はないですが、少なくとも画面内を占める割合が3:7くらいで、背景のほうが演者よりも大きく写っているほうが使いやすいと思います。

3つの画角-(2)ミディアム・ショット

ミディアムショット
次に、ミディアム・ショット=「演者の半身くらいが映るカット」の説明に入りましょう。
ミディアム・ショットは、ある程度の演者の動きに加え、表情まで読み取れるカット。基本的にはかなり使いやすいカットとなります。
僕も旅行中など気ままにカメラを回す時には、必然的にこの画角のカットが多くなるほどオーソドックスなものなので、最初はむしろミディアム・ショット以外の2つの画角を意識したほうが良いかもしれません。

3つの画角-(3)クローズ・アップ

クローズアップ
クローズ・アップは、演者の表情の変化や動きを最も印象的に写す事が出来ます。
顔全体のアップだけではなく、目のアップとかも良いですね。

超クローズアップ
クローズ・アップを撮る場合、僕はCanonの100mm f2.8Macroの単焦点レンズを使う事が多いです。
このカットも広い画と同様、ついつい撮り忘れがちになるので、1カットこう言った超寄りのカットがあると編集のバリエーションが広がります。

2. ショットリスト(もしくは簡単なイメージコンテ)を作っておく

こちらは上に書いたような「とにかく撮りまくる」という方法とは真逆のアプローチですが、「自分が編集する上でどんな素材が欲しいか」を想定して、事前に自分の中でショットリスト(どんなカットを撮るか)を作っておくという事です。
前編で話した「準備」の話とも少し被りますね。

もちろん本当に時間がなければ、最低限絶対必要なカットだけをショットリストとしてまとめ、あとは多様な画角のカットを活かして解決していくのも良いと思います。

僕はいつもクライアント案件の撮影では、詳細なコンテがない場合でも簡単なイメージコンテを作る事が多いので、大体それを撮影中に頻繁にチェックしながら撮影を進めています。
そうすることによって「撮り忘れ」を防げて、編集の際にもスムーズにカット編を進める事ができます。
ショットリストやコンテと言うと聞き慣れていない方にはものすごく敷居が高いように思われがちですが、そこまで難しく考えなくても大丈夫です!
コンテの書き方は今後の記事でも詳しく説明していきますが、これといって「絶対にこのフォーマットで」という決まり事も無いので!

提出義務がなく自分さえ理解できれば良いものだったら、まずはサクッと箇条書きでも良いので作ってみましょう。
これならとにかく撮りまくるラン&ガンの現場でも出来そうだと思いませんか?
その時に映像につける音楽や全体の流れ、自分が撮りたい画を想像して作っていくと思うので撮影がかなり楽だと思います。

3. B-rollを多めに撮っておく

B-rollを撮っておこう
ここで言うB-rollとは、インサートカットのことです。
つまりメインでストーリーを伝える素材(インタビュー撮影で言うところの演者が喋っているカット)以外で、メインのカットとカットのつなぎ部分に入る「物語とは直接的に関係はないが、メインのカットを説明するにあたってサポートの役割を果たすカット」のことです。
僕はこのB-rollをめちゃめちゃ撮ります笑。
ワンマンでなおかつ映像の詳細な内容まで決まってない場合は、とにかく量を撮っておきます。
僕は「自然」や「音」が感じられるようなB-rollが好きなので、エスタブリッシュ・ショットというよりは、割と寄りのカットでのB-rollが多いです。

撮影場所の空気感が伝わるようなB-rollを撮りたい
ワンマンではなく、サブカメラマンなどを自分以外のカメラマンに依頼する時は「B-roll多めに撮っておいて下さい」と事前に言っておいたりもします。

最後に

紹介したのはほんの一部ですが、これだけでも意識して撮影に挑むことによって、ワンマンで制作した作品の「安定感」はかなり出てくるかと思います。
また上記の方法だけでもきちんと取り入れる事によって、確実に作品の質は上がります。
一人で現場に行かなければいけない時でも、ドーンと胸を張って行きましょう。

もちろん可能な限り「準備」は怠らず。
準備をすれば自信が出ます。自信があれば堂々と現場に行く事ができるでしょう。
事前に想定できる問題は、プレプロダクション段階でクリアにしておくべきです。

堂々としてる人の作品は、作品自体も堂々としてますからね。

Tomoaki Yui

Author

由井友彬氏プロフィール画像

由井 友彬 / 映像作家
Tomoaki Yui

東京生まれ、石川県金沢市育ち。

美容師を志して18歳の時に上京。美容関係の学校に通った後、3年間都内美容室に勤務。その後、4年制大学に入学、哲学専攻。

大学在学中、米・カリフォルニア州立大学モントレー・ベイ校に留学。同校にて、Cinematic Arts & Technologyを専攻。
演出、制作、編集など映像制作の基礎を学ぶ。
留学中に日系大手旅行会社に売り込み、イメージビデオ制作の機会を得る。

以降、映像作家としてのキャリアを築く。2017年8月に帰国。現在は、東京を拠点にフリーランスの映像作家として活動中。