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ワンマンでの撮影スタイル(前編)ーフローやメリット/デメリット、気をつけているたった1つのことー

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ワンマンでの撮影スタイル(前編)
~フローやメリット/デメリット、気をつけているたった1つのこと~

こんにちは、由井友彬(Instagram@tomoaki_yui)です。

今回は僕の映像製作スタイル、その中でもワンマンでの映像制作について、書きたいと思っています。

まず「ワンマン」とはどういった意味でしょう?
僕も気になったのでGoogleに聞いてみました。

「ワンマン」とは通例ふたり以上が従事する事を、ひとりだけで行う状態であること。
ワンマン:通例ふたり以上が従事する事を、ひとりだけで行う状態であること。


映像の世界では「撮影〜編集まで一人でやってしまう」ことを指します。

先に言っておくと、今回の記事では決して「ワンマン」での映像制作をお勧めしているわけではありません。
もちろんアシスタントさんや照明さん、音響さんや編集者さん、もしくはカメラマンさんetc…まで雇うだけの予算のある仕事であるならば、自分としてはディレクションに集中ができると思うし、そうした方が僕自身は全体の映像クオリティが上がると考えています。
(もちろんちゃんとしたプロの方、そして信頼の置けるチームであることが大前提ですが)

2016年の12月にアメリカで初めて仕事として映像を始めてから今に至るまで、僕の仕事の70%以上は、撮影~編集~納品を一人でこなしています。
もちろん、特殊なVFXやグラフィック、音響などが必要な場合は外部に委託するんですが、時と場合によってはアシスタントすらいない現場を一人で走り回っている場合もあります。

この記事では一人で全てをこなさなければならない場合僕がどのように仕事をこなしてるかについて書きたいと思います。

実際のワンマンスタイルでのフロー

制作会社やプロダクション、または映像を作って欲しい会社から直接案件を受注します。
僕の場合どこかにマネジメント等をしてもらっている訳ではありません。
基本は今までのお客様からのご紹介や、クライアントが僕のリール映像もしくはSNSを見て案件をご相談頂くことが圧倒的に多いです。
紹介や相談の後、直接打ち合わせをさせて頂き、内容、時期、予算感の確認など細かな部分まで詰めていき、実際の撮影となります。

ワンマンの映像制作では、そのまま僕自身が編集者として納品まで行うことがほとんど。
なので、最初にクライアントと決めたフォーマットや納品数を最終的には納めていきます。
もちろん納品の前には初稿出しとして、カット割りや色味を含めた雰囲気などの確認を進めていき、修正を重ねて実際の納品となります。

ワンマンのメリットとデメリット

メリット

ワンマンで制作する案件の場合、撮影から納品までのスパンが短いことが多いので、自分で撮影して編集するのは、クライアントの要求や制作の意図などを自分が把握していれば仕事ができるということ。
ある意味では制作が進めやすく、自分自身でカメラを持って撮影している時点で編集時の自分の進め方を意識しながらの制作が可能です。

また自分一人で進めていくということは、スピーディに制作を進める事が出来るので、提出までにかかる時間も短く、他の部署(カラリストや編集者、またはカメラマン)とのコミュニケーションは必要ありません。
集中すべきコミュニケーション相手は、クライアント(また案件によってはモデル事務所など)のみです。

デメリット

メリットの裏返しで大きなデメリットも多くあります。
「撮影〜編集〜納品」までを一人でこなすワンマン制作では、大きな広告案件などを回すのはとんでもなく大変です。
スタジオ撮影など照明さんが入った方が確実に良い案件などもそうですが、大きな案件などでは、自分一人だけで考えてやるよりは、それぞれのプロがそれぞれの専門分野でパフォーマンスを発揮した方が良い物が出来る場合が多くあります。

一人で抱えられる量にはどうしても限界があり、案件が大きくなればなるほどやらなければいけない事が増えます。
また、複雑なディレクションを必要とする場合は、やはりディレクターとカメラマンをしっかりを分けた方が、確実にそれぞれの制作に集中ができるので良い制作が進められます。
そんな大きな広告案件や複雑な要求の仕事の場合、ワンマンの制作ではかなりきつい事が多くなるので、僕自身こちらからクライアントに提案をし様々な特殊分野の人を絡めていくこともあります。

ワンマン制作の際に気をつけているたった1つの事

ではここからは、どうしても一人で作品制作をしなくてはならなく、今からワンマン制作の世界に飛び込んでいくかたへ。

ワンマンでの現場では、基本的にカメラを回しながら同時にディレクションもしていく必要があります。
普通はディレクターとカメラマンが分かれているのでそれぞれが自分の仕事に集中できますが、ワンマンの場合はどちらも一人でしっかりとこなさなければなりません。
被写体が無機物である場所や製品を撮影する時は問題ないですが、演者がいる場合、その演者にディレクションもしつつ、カメラの動きや構図を決めていかなければなりません。

そんな時に肝心となるのが「準備」です。
僕がワンマン制作の時に気を付けているのは、「準備」。これに尽きます。

意外と「当たり前のことを言うなぁ」と思いました?笑
ただ、このシンプルで誰にでもできるプロセスが、作品のクオリティにめちゃくちゃ影響します。
僕の言う準備とは、「作品内容の準備」や「機材の準備」だけでなく、「朝起きる準備」や「心の準備」などのことも準備だと思っています。

確かに、ある程度の作品レベルまではセンスや機材力でも賄えるでしょう。
しかし仕事として映像をやっていきたいのであれば、この当たり前のように見える「準備」と言うプロセスを疎かにすべきではありません。
確かにカッコ良く見える映像の世界。
しかし実際は最初にカメラのレコードボタンを押す前までに、色々な「準備」が必要です。
仕事の上ではこの「準備」を疎かにした人は、必ずと行って良いほどどこかで失敗します。

例えば「作品内容の準備」ですが、1フレームでも多くのコンテを考えてから現場に行けば、そのコンテをもとに更にクリエイティブなシーンが思い浮かぶかも知れません。
しかし、それをしないと現場に行ってからシーンを考えなければなりません。

機材も一緒です。
機材は所詮機械なのでいつか壊れます。
ただそれを現場でしてしまってはクライアントは落胆するでしょう。
それがあなたのせいじゃ無かったとしても。

もちろん気持ちの準備も大切です。気持ちが入っていない作品は、だれが見ても分かります。
あとは「朝起きる準備」。これは本当に必須。

先でも述べましたが、映像制作には多くの「準備」が必要です。
僕の場合、元々誰かのアシスタントに付いていたり、カメラマンとしてキャリアをスタートさせたわけではないので、むしろ一つ一つの準備を自分なりに手探りで進めていきました。

もちろんラン&ガン(Run & Gun)スタイル、つまり「とりあえずカメラを持って撮りに行くスタイル」の現場も多くありました。
そんなラン&ガンの時は、仕事をはじめたての頃はかなり焦り、更にそれに演者さんがいるような現場では、かなりテンパっていました。
でも仕事だから、不慣れなことを言い訳にはできません。
どんな状況でも素材として活かせるカットをきちんと持ち帰らなくてはいけない。
こうした苦い経験から、僕はあらゆる「準備」をできる限りしようと思うようになっていったのでした。

最後に

先にも述べたように、ワンマンで制作を進めていくことは決して簡単なことではありません。

しかし、自分の動き方次第で、可能性は無限だと思っています。
例えば低予算の作品でも、自分の技術次第で大がかりな制作作品のように作り上げていく事だって可能です。

次の記事では僕がワンマンの制作の中でも、特にラン&ガンスタイルの現場で、経験の浅い頃に意識して行っていた3つのポイントについて解説しましたので、ここまで読んで頂いた方は、是非次の「ワンマンでの撮影スタイル(後編)~ラン&ガンスタイルの現場で意識するべき3つのポイント~」もクリックしてみて下さい。

Tomoaki Yui

Author

由井友彬氏プロフィール画像

由井 友彬 / 映像作家
Tomoaki Yui

東京生まれ、石川県金沢市育ち。

美容師を志して18歳の時に上京。美容関係の学校に通った後、3年間都内美容室に勤務。その後、4年制大学に入学、哲学専攻。

大学在学中、米・カリフォルニア州立大学モントレー・ベイ校に留学。同校にて、Cinematic Arts & Technologyを専攻。
演出、制作、編集など映像制作の基礎を学ぶ。
留学中に日系大手旅行会社に売り込み、イメージビデオ制作の機会を得る。

以降、映像作家としてのキャリアを築く。2017年8月に帰国。現在は、東京を拠点にフリーランスの映像作家として活動中。